| 〔四月〕 |
人生のこと嘉し
ときに愉しく
時に寂しく
ときに美しく
春夏秋冬
(欣求鈔(ごんぐしょう)) |
人生は楽しいこと苦しいこと様々なことがありそれに対して、いちいち向かい合っていくから生きている実感重みがある。 |
| 〔五月〕 |
しみじみと
小便すれば葱坊主
(紅(べに)鱒群(ますぐん)) |
放尿して我にかえり、ふと足元を見れば、葱坊主(ねぎぼうず)がこっけいな顔でつっ立っていて愉しい。
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黒揚羽花かたむけて強く吸う
(欣求鈔(ごんぐしょう)) |
花をかかえ花弁の奥に嘴(くちばし)をいれて貪欲に蜜を吸う黒揚羽(くろあげは)のエロチズムさえ感じる一句である。 |
| 〔六月〕 |
もりもりと
土もりあげてもぐらの馬鹿
(欣求鈔(ごんぐしょう))
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身の危険もわからず、のどかな春の日、地中からもぐらがとぼけたこっけいな顔を出す。
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| 〔七月〕 |
修験者の
鈴うちふられ霧霽(は)るる
(欣求鈔(ごんぐしょう)) |
テンポ快く鳴り響く修験者(しゅげんじゃ)の鈴の音は、山道の霧を晴れ上がらせ、行く先々を照らす様だ。
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| 〔八月〕 |
颱風の部屋
藪蚊しづかに鳴きてくる
(紅(べに)鱒群(ますぐん))
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颱風(たいふう)の無気味な一瞬のしじま、ふとどこからか藪(やぶ)蚊(か)のかすかなうなり声が近づいてくる。
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| 〔九月〕 |
あきさめや
田んぼの道を寂光院
(紅(べに)鱒群(ますぐん)) |
何を祈るか秋雨の降る田んぼ道を寂光院(じゃこういん)に向かう作者のおだやかな心情が浮かぶ句
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| 〔十月〕 |
紅鱒群粛々ときぬ秋日射す
(紅(べに)鱒群(ますぐん)) |
深々と射しこむ秋の陽、水の中では粛々(しゅくしゅく)とではあるが威風堂々(いふうどうどう)と紅(べに)鱒群(ますぐん)が泳ぎくる光景。 |
| 〔十一月〕 |
さやさやと
粉雪ふりきぬ通夜夜ふけ
(紅(べに)鱒群(ますぐん)) |
妻の通夜、なぜ息たえたのか妻に問いつつ、枕元に座す。外は粉雪がふりしきり夜が更けていく。 |
| 〔十二月〕 |
雪の宿
それぞれの過去匂わす女
(欣求鈔(ごんぐしょう)) |
雪に降りこめられた湯治の女たちの体から語るに及ばず過去の生きざまがにじみ出ている。 |
悔ゆることなしいま年末電車
(欣求鈔(ごんぐしょう)) |
年末の電車に一人身を埋め、いろいろあったがわが人生十分よい人生だったとしみじみ思う。 |
| 〔一月〕 |
ふるさとや雪は空青新校歌 |
昭和39年池田町小学校校歌披露の折、池田小学校へ来た時の心境です。 |
雪恋いて
ふるさとの山を図解する |
めずらしく都会に大雪が降った日、故郷信州の山々はどんな形に雪が積もったのだろうか。 |
| 〔二月〕 |
妻病めば
我れも病むかに悴(やつれ)める |
日に日におとろえゆく病床の妻を見て、自分の心も体も同時におとろえてゆくいら立ち。 |
| 〔三月〕 |
糸遊(かげろう)に
溶けてしまいぬ虧蝕(くえ)地蔵(じぞう)
(欣求鈔(ごんぐしょう)) |
野のすみのうす汚れた地蔵に、かげろうが暖かそうにまつわりつつみこんでいる。 |